メモ:“Serving Each User”: Supporting Different Eating Goals Through a Multi-List Recommender Interface(recsys2021)

論文
https://dl.acm.org/doi/pdf/10.1145/3460231.3474232

概要

レシピサイトでのレコメンデーションを対象にした論文。
食の嗜好はその時々で異なる。今日はヘルシーなものが食べたいけど明日はジャンクなものを食べたいということは日常茶飯事。
この課題をレコメンドの提示方法の工夫で解決する。
具体的には複数のレコメンドリストを提示することで解消を図る。
実験として、

  • 複数のレコメンドを提示する/単一のレコメンドを提示する
  • レコメンドの説明を付与する/説明を付与しない

のパターンでユーザー実験を行った。
結果として複数リストの提示はダイバーシティ、選択の満足度においてユーザーの支持を得られた。

やりたいことは
[RQ1] 説明付きのmulti-listレコメンドが、single-listのレコメンドに比べてユーザーにとって有用なものかの評価
[RQ2] 説明付きのmulti-listレコメンドが、single-listのレコメンドに比べて異なるユーザーのゴールや健康的な食品選択の助けになっているかの評価

の2つ。

実験設定

ロジック

58,000個のレシピから5つのカテゴリ(Casseroles, Toasts. Salads, Pasta, Chicken)のアイテムをランダムに1,000個弱サンプリング。
また、レコメンドのseedになるアイテムを30個ほど選択。
ランキングはタイトルのtermをTFIDFで重み付けした類似度の降順ソート。
更にそこからsub-listを生成する。
まず上述の類似度によってTop40個のレシピを取得し、そこから下記のロジックによって各項目毎にTop5のレコメンドリストを生成する。

  • Similar Recipes:関連度そのまま
  • Fewer Calories:カロリーの低い順に並べ直す
  • Fewer Carbohydrates:100gあたりの炭水化物含有量が少ない順
  • Less Fat:100gあたりの脂質が少ない順
  • More Fiber:100gあたりの食物繊維が多い順

被験者

366人の参加者。男女比は52:48で、年齢の平均は約35歳。

手順

より健康的な選択肢も含めてユーザーが関心のあるレシピを見つけられたかどうかをチェックする.
ユーザーはデモグラと健康状態、料理経験を記入する。
5つのカテゴリ(Casseroles, Toasts. Salads, Pasta, Chicken)のレシピを検索するという形のタスクを行う形。下記の図のように検索結果としてシードアイテムを提示して、その下にレコメンドが掲載される。
ここをsingle listのパターンとmulti listのパターンで出し分けて、どのレシピが好きか、あるいは家で作ってみたくなるかを選択する。
5回の試行の後、進められたレシピセットを、選択の難しさ、多様性やわかりやすさ、の観点から評価してもらう。

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評価指標

  • ユーザーの評価に関連する指標

1つ目の問いを確かめるための指標。
実験におけるユーザーのFB情報をもとに作成する。ユーザーには「選択の難しさ」、「多様性」、「理解のしやすさ」、「選択の満足度」の観点で評価をしてもらう。

  • 選択指標&ユーザー特徴

2つめの問いを確かめるための指標。
それぞれのレシピに対する健康度を表すものとしてFSA Scoreというものを付与する。
rangeは4(健康)~12(不健康)となっていて、UK Food Standard Agtencyというところが公開しているものを使う。
油、砂糖、塩が多くなるとスコアが高くなる。
選んだレシピのFAS Scoreとレコメンドしたレシピの平均FAS Scoreの関係性を利用する。
また、選んだアイテムに対して選んだときの目標があったかを尋ねる。
最後にデモグラと健康状態、料理経験(5pointスケール)を尋ねる。

結果

確認的因子分析

「選択の難しさ」、「多様性」、「理解のしやすさ」、「選択の満足度」のスコアと、それぞれの質問内容の関係性を確認的因子分析で確認した。
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構造方程式モデリング

「選択の難しさ」、「多様性」、「理解のしやすさ」、「選択の満足度」のスコア、レコメンドのロジック、ユーザーの特徴と言った要素の関係性を構造的に明らかにするために、構造方程式モデリング利用する。
結果は以下。
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single-list vs multi-list

レコメンドのパターンと、評価指標の関係性を確認する。
まず、multi-listであることが多様性に大きく寄与していることがわかる。
多様性の観点では、多様性の高さは選択の難しさを高めてしまうこと、multi-listの提示による選択の難しさは多様性によって媒介される事がわかった。一方、説明の有無は関与していない。
また、multi-listの提示による選択満足度は多様性によって媒介され、多様性は選択の満足度に影響を与えていることがわかった。一方、説明の有無は関与していない。

選択指標

対照的な結果として、説明付きmulti-listは非健康的なレシピ選択へ導いてしまっているが、説明の追加自体は健康的なレシピ選択へ導くという結果になった。
また、選択したアイテムのFSAスコアとユーザーのゴールにはネガティブな関係性があった。
これは健康的なレシピの選択がユーザーのゴールに関係を持つことを示している(FSA Scoreは低いほど健康的)。
実際にmulti-listに対して説明の有無による選択アイテムのカテゴリの割合を見てみると、説明ありの方はMore Fiberの選択率が10pt近く上昇している。また、食物繊維の多いレシピはFSAスコアが低くなる傾向がある。
さらに、ユーザーのゴールにマッチした選択によって、高い理解のしやすさを得られる事もわかった。

ユーザー特徴

ユーザの自己申告健康度合いと選んだレシピのFSAスコアにはネガティブな関係がある。
自己申告で健康とした人は健康志向なレシピを選びやすい。
また、ユーザーの料理経験と選択の満足度にはポジティブな関係があり、今回のインターフェースが経験者向けに設計されていることが示唆される。

結論

[RQ1] 説明付きのmulti-listレコメンドが、single-listのレコメンドに比べてユーザーにとって有用なものかの評価
muti-listのほうがユーザーをより満足されられるという結果になった。それは選択の多様性から導かれるものである。
このインターフェースが料理経験がより多い人にとって好まれやすいものである。
ラベルのないmulti-listのインターフェースでは説明を入れても選択肢の過多を減らせないし、満足度も上げられない。これは先行研究の結果とは少し異なる部分。
タイトルや詳細説明などの付加情報が入っていると説明の追加にインパクトがないのかも。

[RQ2] 説明付きのmulti-listレコメンドが、single-listのレコメンドに比べて異なるユーザーのゴールや健康的な食品選択の助けになっているかの評価
multi-listのインターフェースのほうが不健康な関連レシピを選びがちになっているが、一方で説明を加えることで多くのユーザーが食物繊維を多く含むレシピを選択してくれることもわかった。
健康的なレシピを選ぶことがユーザーの食事やレシピのゴールと関係している。
これはより健康的なレシピが存在するのであればそれをサポートしてあげることでユーザーの健康的な食事目標に貢献するかもしれないことを示唆している。

所感

最近こういったインターフェースのレコメンドのパターンが増えてきているんじゃないかという話を周りでしていた中でrecsys2021で発表されていたということで一通り確認。
こういったユーザーヒアリングも自分たちでやるのはなかなか大変なので傾向がなんとなくわかっただけでありがたい。